FFU とは?クリーンルームの心臓部
FFU(Fan Filter Unit:ファンフィルターユニット)は、ファンと高性能フィルターを一体化した箱型モジュールです。クリーンルーム天井の T-Bar グリッドに直接設置し、天井裏のリターンエアをファンで吸い込み、HEPA または ULPA フィルターを通して均一な層流(または乱流)としてクリーンゾーンへ送風します。
シャワーヘッドに例えると、水栓(ファン)が水流を押し出し、シャワー面(フィルター)が水を均一に広げる——FFU はまさにこれを空気で行っています。
従来の中央空調ダクト給気と比べ、FFU の最大の利点はモジュール性です。クリーンルームに数十〜数百台設置でき、1 台故障しても交換するだけでライン停止を回避できます。
FFU 一般的な 3 規格の比較
市場の FFU は主に 3 つのサイズに分かれます。以下の表で寸法・風量・騒音・対応フィルターなどを比較します。
FFU 一般的な 3 規格の比較
サイズ・風量・騒音・フィルター対応を一覧
| パラメータ | 標準型 1200×600 | 薄型 600×600 | 大風量 1200×1200 |
|---|---|---|---|
| 外形寸法 (mm) | 1200×600×250 | 600×600×200 | 1200×1200×300 |
| 定格風量 (CMH) | 900–1,200 | 400–600 | 2,000–2,800 |
| ファン出力 (W) | 120–180 | 60–90 | 250–400 |
| 騒音 dB(A) | 50–55 | 45–50 | 55–62 |
| 対応フィルター | HEPA H13/H14 | HEPA H13/H14 | HEPA H14 / ULPA U15 |
| 面風速 (m/s) | 0.35–0.45 | 0.35–0.45 | 0.35–0.45 |
| 対応清浄度 | ISO 5–7 | ISO 5–7 | ISO 3–5 |
数値は業界一般仕様の典型範囲。メーカーにより差異。風量は面風速 0.35–0.45 m/s 基準。
選び方
- ▸標準型 1200×600:最も汎用性が高く、半導体・FPD・製薬など ISO 5–7 のクリーンルームに適合。台湾市場の FFU の 7 割以上がこのサイズです。
- ▸薄型 600×600:天井高に制約がある場合(クリーンベンチ、実験室の局所清浄など)に使用。風量は少ないが静音。
- ▸大風量 1200×1200:半導体リソ・エッチング区など ISO 3–4 の高カバー率・ULPA 必須の環境向け。
回転数・風量・騒音:3 つのトレードオフ
FFU の回転数は風量と騒音を直接左右します。100% 運転では風量が最大で清浄度も最高ですが、騒音は 55 dB(A) を超え、長時間のオペレーター作業には不向きです。
実際の工場では、ほとんどの FFU を 70–80% の回転数 で運転し、「十分な清浄度」と「許容可能な騒音」のバランスを取っています。
FFU 回転数 vs 騒音 vs 風量:3 つのトレードオフ
風量を上げると騒音も上がる;通常運転は 70–80% 回転
100 %: 初期検証・PAO テスト
80 %: 通常量産(最多)
60 %: 夜勤・低負荷・省エネ
40 %: スタンバイ・無人 CR
データは 1200×600 標準型 FFU + HEPA H14。EC モーター + VFD で騒音 3–5 dB(A) 低減可能。
実務推奨
| シナリオ | 推奨回転数 | 理由 |
|---|---|---|
| PAO 完全性テスト | 100% | 規格要求でフルスピード |
| 日勤量産 | 75–85% | 清浄度と作業環境の両立 |
| 夜勤 / 低負荷 | 55–65% | 電力 30% 以上削減、騒音 ≈44 dB(A) |
| スタンバイ(無人) | 35–45% | 陽圧維持のみ、大幅省エネ |
AC モーター vs EC/DC モーター
FFU のファンには 2 種類のモーターがあります。
AC モーター(交流)
- ▸低コスト・構造がシンプル
- ▸全速 / 半速 / 停止の 3 段切替が基本(外付け変圧器で微調整可能)
- ▸効率約 50–60%、発熱量が大きい
EC モーター(電子整流 DC)
- ▸単価は 20–40% 高いが、インバータ内蔵
- ▸0–100% 無段変速、1% 単位で制御可能
- ▸効率 85–92%、消費電力 40–50% 削減
- ▸同風量で 3–5 dB(A) 静か
- ▸グループ制御対応で、各 FFU を個別に速度管理
1,000 台規模の半導体工場では、AC → EC への切替で年間約 2,000–4,000 万円の電力費削減が期待できます(電気料金と稼働時間に依存)。回収期間は通常 2–3 年です。
フィルター選択:HEPA か ULPA か?
FFU の濾過性能はフィルターで決まります。フィルター選択を誤ると、どんなに良いファンでも目標清浄度を達成できません。
| フィルター等級 | 効率(0.3µm) | 圧損(初期) | 対応清浄度 | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|
| HEPA H13 | ≥99.95% | 120–180 Pa | ISO 7–8 | 食品、電子組立、一般クリーンルーム |
| HEPA H14 | ≥99.995% | 150–250 Pa | ISO 5–6 | 製薬、半導体後工程、FPD |
| ULPA U15 | ≥99.9995% | 250–350 Pa | ISO 3–4 | 半導体前工程、レチクル保管 |
| ULPA U16 | ≥99.99995% | 300–450 Pa | ISO 1–3 | 極端な清浄要求(先端プロセス) |
ポイント:フィルター等級が高いほど圧損が増え、FFU モーターに求められる出力も増加します。ISO 7–8 の食品工場では H13 で十分であり、ULPA を使うのは過剰設計(電力と騒音のムダ)です。
用途別規格マッチング
業種や清浄度等級によって、FFU 仕様とフィルター選択は大きく異なります。以下に 5 つの典型的なシナリオを示します。
FFU 用途別規格マッチング
清浄度等級が FFU カバー率とフィルター選択を決定
| 用途 | ISO 等級 | FFU 規格 | フィルター | カバー率 | 要点 |
|---|---|---|---|---|---|
| 半導体リソ区域 | ISO 3–4 | 1200×600 / 1200×1200 | ULPA U15–U16 | 80–100% | 層流 + ULPA、ゼロ許容 |
| 半導体後工程 | ISO 5–6 | 1200×600 | HEPA H14 | 60–80% | H14 で十分、コスト管理 |
| 製薬無菌充填 | ISO 5 | 1200×600 | HEPA H14 | 80–100% | cGMP 層流 + H14 |
| 食品工場包装 | ISO 7–8 | 600×600 | HEPA H13 | 25–40% | 乱流で可、異物防止重視 |
| 実験室・クリーンベンチ | ISO 5 | 600×600 薄型 | HEPA H14 | 局部 100% | 局所清浄(全室ではない) |
FFU カバー率 = FFU 吹出面積 / 天井面積。ISO 5 以上は通常 60–100%(層流)。ISO 7–8 は 25–40%(乱流混合)。
選定フロー:5 ステップ
- 1目標清浄度を確認:ISO 何級か?→ カバー率とフィルター等級が決定。
- 2FFU 台数を計算:カバー率 = FFU 吹出面積合計 ÷ 天井面積。ISO 5 は 60–100%、ISO 7 は 25–40%。
- 3サイズを選定:天井モジュールは 600mm か 1200mm か?高さ制約は?
- 4モーターを選定:50 台超なら EC + グループ制御で省エネ効果大。
- 5フィルターを選定:ISO 等級に応じて HEPA / ULPA を選び、圧損がモーター能力内か確認。
よくある質問 FAQ
Q1: FFU と MAU・AHU の違いは? MAU(外気処理ユニット)は外気を取り込み温湿度を処理します。AHU(エアハンドリングユニット)は中央空調箱で大量の循環空気を調和します。FFU は末端設備で「最後の高効率濾過+送風」を担当します。通常は MAU → AHU → FFU の順で連携運用します。
Q2: FFU のフィルター交換頻度は? HEPA H14 の標準寿命は 3–5 年。判断基準は圧損です。終圧損が初期の 2 倍(または絶対値 400–450 Pa 超過)になったら交換時期です。四半期ごとの圧損測定と傾向管理を推奨します。
Q3: EC モーターのコスト増は回収できる? FFU 50 台以上、日 16 時間以上の稼働であれば、省エネ効果で 2–3 年で回収可能です。グループ制御により各 FFU のリモート監視も可能になり、保守コストも削減できます。
Q4: 全部 ULPA にしない理由は? ULPA は HEPA に比べ圧損が 50–100% 高く、モーター出力・電力・騒音がすべて増加します。ISO 7–8 環境では HEPA H13 で規格を満たせるため、ULPA は過剰設計です。
Q5: FFU カバー率の計算方法は? カバー率 = FFU 吹出面積合計 ÷ クリーンルーム天井面積 × 100%。例:10m×6m の部屋に 1200×600 FFU を 50 台設置 → 吹出面積 = 50 × 1.2 × 0.6 = 36 m²、天井面積 = 60 m²、カバー率 = 60%。



