200 円のプレフィルターを交換し忘れると、後段の 8,000 円の HEPA 寿命が半減する。小を惜しんで大を失う — 空気ろ過で最もよくある失敗。
プレフィルターとは:最前列の「網戸」
家の網戸を想像してください — 虫や落ち葉は防ぎますが、細かい塵はそのまま入ってきます。空調システムでプレフィルターが担う役割がまさにこれです:第一の防御線、5μm 以上の粗粒子を捕集します。建築粉塵、花粉、毛髪、繊維くずが対象です。
5μm はどのくらい?髪の毛の太さの約 1/15。それより小さい粒子は下流の中性能フィルターと HEPA フィルターが処理します。
プレフィルターの本質的な価値は「きれいに濾す」ことではなく、後段の高額フィルターの盾になること。安価なプレフィルターを定期交換するだけで HEPA 寿命が 40% 以上延びます — フィルター管理戦略で最も投資効率が高いアクションです。
等級の分類:EN 779 の G1 〜 F7
プレフィルター効率等級は EN 779 に準拠し、低い順に G1、G2、G3、G4(粗効率)および F5、F6、F7(微効率)。2018 年以降 ISO 16890 への移行が進み ePM10(≥10μm 粒子捕集効率)で分類されますが、業界の見積書にはまだ G3/G4/F5 が多用されています。
プレフィルター等級対照表:G1 → F7
EN 779 / ISO 16890 対応 — 等級が上がると圧損も増加
| 等級 | 計重効率 | 主な捕集 | 代表用途 | 初期 ΔP |
|---|---|---|---|---|
| G1 | 50–65 % | 粗砂・大繊維 | 排気口・ルーバー | 20–30 Pa |
| G2 | 65–80 % | 粉塵・花粉 | 工場吸気・駐車場 | 25–40 Pa |
| G3 | 80–90 % | 建築粉塵・毛髪 | ビル AHU 初段 | 30–50 Pa |
| G4 | 90–95 % | 細粉塵・胞子 | 半導体外気・病院一般 | 40–60 Pa |
| F5 | 40–60 %* | ≥1μm 浮遊塵 | 実験室・電子工場前段 | 50–80 Pa |
| F6 | 60–80 %* | 細菌担体・煤塵 | 製薬バッファ・食品工場 | 60–100 Pa |
| F7 | 80–90 %* | 微粒子・煙霧 | CR 前段・HEPA 前級 | 80–120 Pa |
* F5–F7 効率は EN 779 比色法(Efficiency)。効率は EN 779 計重法(Arrestance)。G1–G4 は ≥10μm 粗塵、F5–F7 は ≥1μm 微粒子の捕集を開始。ISO 16890 では ePM10 効率で表示。
この表の読み方:
- ▸G3 / G4 が最も一般的。オフィスビル、工場空調、病院一般エリアの AHU 初段はほぼ G4 一択。
- ▸G1 / G2 は粉塵負荷が極めて高い場所 — セメント工場吸気口、駐車場換気、排気前段の粗フィルター。
- ▸F5 / F6 / F7 は中性能の境界。後段が HEPA H13/H14 なら、F5 または F6 を二段目プレフィルターにすれば十分。
購買メモ:「G4 / ePM10 ≥50%」は EN 779 G4 と ISO 16890 ePM10 50% の両方を満たす意味。移行期は二重表記が普通 — 見積に記載されている効率値がどちらの規格かを必ず確認。
三大構造:パネル・バッグ・プリーツ
同じ G4 でも外観は全く異なります。構造で粉塵保持量、設置奥行、圧損カーブ、交換頻度が決まります。
初効フィルター 3構造比較:パネル vs バッグ vs プリーツ
同じ G4 でも構造で粉塵保持量・寿命・奥行きが大きく変わる
高風量・低圧損・スペース余裕
長寿命・交換頻度低・AHU 還気
奥行制限・FFU 前段
粉塵保持量と ΔP は G4 等級・定格風量の典型値。ろ材密度と面風速で変動。
簡潔な覚え方:
- ▸パネル型:最安・最薄・交換頻度最多(1–2 ヶ月)— スペースと風量に余裕のある工場吸気向き
- ▸バッグ型:粉塵保持量最大・寿命最長(3–6 ヶ月)— 半導体 Fab や病院など停機を最小化したい AHU 還気向き
- ▸プリーツ型:奥行最小(50–100mm)— FFU 前段や枠奥行が限られる既存改修向き
実例:12 インチ半導体 Fab の MAU(外気空調機)、吸気面積 6 m²、風量 120,000 CMH。パネル G4 では外気砂塵が多く保持量 150 g が約 6 週で飽和し、その都度停機交換。バッグ G4 に変更後、保持量 500 g で交換サイクルが 4 ヶ月に — 年間停機 4 回減、メンテナンス工数も大幅に削減。
枠材選定:紙・アルミ・亜鉛めっき鋼・ステンレス
ろ材は「心臓」、枠は「骨格」。効率等級だけ見て枠材を見落とすと、ろ材がまだ使えるのに紙枠が湿気で軟化変形し、シールが崩壊して粉塵がバイパスする事態に。
プレフィルター枠材選定:紙・アルミ・亜鉛めっき鋼・SUS
枠材が寿命上限を決める — ろ材と枠、どちらが先に劣化するか
| 枠材 | 耐温 | 耐湿 | 防火 | 枠寿命 | コスト |
|---|---|---|---|---|---|
| 紙枠 | < 70 °C | 劣(軟化) | なし | 1–3 ヶ月 | ★☆☆☆ |
| アルミ枠 | < 200 °C | 良好 | 不燃 | 再利用可 | ★★☆☆ |
| 亜鉛めっき鋼 | < 350 °C | 良好 | 不燃 | 再利用可 | ★★★☆ |
| SUS 枠 | < 500 °C | 優 | 不燃 | 10 年+ | ★★★★ |
温度・湿度は枠材自体の耐性。高湿環境では紙枠は 2–4 週で軟化変形。
経験則:
- ▸紙枠:安価・軽量・乾燥環境向き(オフィス、商業施設)。梅雨期の工場は NG — 2 週で枠が軟化。
- ▸アルミ枠:耐湿・再利用可能(ろ材だけ交換)、長期 TCO は紙枠より低い。AHU のスタンダード。
- ▸亜鉛めっき鋼 / SUS 枠:耐熱・耐食、化学排気や耐高温フィルター前段に。SUS は最もコスト高だが酸アルカリ環境で 10 年以上持つ。
実例:あるディスプレイパネル工場が紙枠 G4 を MAU 初段に使用。臨海立地のため塩分含有外気で紙枠が 3 週で変形。アルミ枠に変更後、同じろ材の実効寿命が 3 週から 8 週に延長 — ろ材が変わったのではなく、枠が先に壊れなくなった。
用途別:どの等級を使うか
プレフィルターは「最上位を買えば正解」ではない — 等級が上がると圧損も上がり、AHU ファンの電力コストが増える。選定ロジックの核心:後段は何か?それはいくらか?
| 用途 | 後段フィルター | 推奨プレフィルター | 構造 |
|---|---|---|---|
| 半導体 Fab MAU | F7 + HEPA H14 | G4 | バッグ(大容量・長寿命) |
| 病院一般病棟 | F7 | G3–G4 | パネルまたはプリーツ |
| オフィスビル中央空調 | F7 | G4 | バッグ(3–4 ヶ月サイクル) |
| 工場排気 | 後段なし | G2–G3 | パネル(最安) |
| FFU 前段 | HEPA H13/H14 | G4–F5 | プリーツ(奥行制限) |
| 食品工場 GMP 区画 | F8 + HEPA | G4 | バッグ(耐湿アルミ枠) |
| 駐車場換気 | 後段なし | G1–G2 | パネル(低コスト) |
交換時期:圧損だけが正しい指標
「3 ヶ月ごとに交換」は大まかな目安に過ぎない。正しいやり方は圧損計測:
- 1初期圧損を記録(新品装着時に計測 — G4 パネルで通常 40–50 Pa)
- 2終期圧損を設定(通常初期の 2–2.5 倍、例 100–120 Pa)
- 3圧損到達で交換 — カレンダーに関係なく
なぜか?工業地域や幹線道路沿いでは同じ G4 が 3 週で終圧に達する。郊外の清浄な空気なら 4 ヶ月持つ。固定スケジュールでは、早すぎ(無駄)か遅すぎ(HEPA を殺す)のどちらか。
節約の公式:プレフィルター前後に差圧計(数千円)を設置。差圧が閾値を超えたらランプや信号で通知。年間数万円の HEPA 交換費を節約できる — プレフィルター交換忘れがなくなり HEPA 寿命が安定して 40%+ 延長。
よくある質問
Q:G4 と F5 の差は大きいですか?F5 にすべき?
A:G4 の計重効率(Arrestance)は約 90–95%、F5 の比色効率(Efficiency)は約 40–60% — 試験方法が異なり数値の直接比較不可。端的に言えば F5 は 1–5μm 微粒子の捕集力が明らかに優れる。ただし F5 の初期 ΔP は 20–30 Pa 高い。後段に F7 中性能があれば G4 で十分;中性能なしで直接 HEPA に接続するなら F5 が安全。
Q:プレフィルターは水洗い再利用できますか?
A:ろ材による。金属メッシュ(アルミ、SUS)は洗浄可能 — 乾燥後に再装着、厨房排気の粗フィルターで一般的。不織布・合成繊維は非推奨 — 水洗で繊維構造が崩壊し効率低下・ΔP 不均一に。使い捨てパネル G4 は 1 枚数十〜百円、洗うリスクに見合わない。
Q:プレフィルターは HEPA 寿命にどの程度影響しますか?
A:現場データでは、プレフィルター + 中性能を定期交換すると HEPA 寿命が 40–60% 延長。HEPA H14 は数千〜数万円、G4 は数十〜百円。プレフィルターに 1 円使うと HEPA で 50–100 円節約。半導体 Fab がプレフィルター交換に厳格な理由 — 彼らの HEPA は 1 枚数万円。
Q:ISO 16890 と EN 779、どちらを見るべき?
A:両規格が並行中。ISO 16890(2016 年導入)は ePM1/ePM2.5/ePM10 の 3 区分で EN 779 の G/F より精密。ただし数十年の EN 779 実績から、業界の見積・図面・検収基準の大半はまだ G3/G4/F5 表記。実務では両方を理解し、対応関係を把握していれば問題ない。
Q:プレフィルターの圧損が高すぎる場合は?
A:3 つのアプローチ:(1) より大きいフィルターに変更(面積 2 倍 ≈ ΔP –40%);(2) パネルからバッグやプリーツに変更(展開面積大、ΔP 低);(3) 効率を 1 段落とす(G4 → G3)が後段への影響を評価。ΔP 過大 = 風量不足 = システム全体の効率低下 — 無視できない。
関連規格・参考
- ▸EN 779 — Particulate Air Filters for General Ventilation(G1–F9)
- ▸ISO 16890 — Particulate Air Filters for General Ventilation(ePM1/ePM2.5/ePM10)
- ▸ASHRAE 52.2 — Method of Testing General Ventilation Air-Cleaning Devices(MERV 1–16)



