CDA から XCDA へ移行するとき、最もコストがかかり、しかも失敗しやすいのは、たいてい精製装置そのものではない。精製装置の下流で作り直さなければならない配管と、切替の間も止められない生産ラインである。まずこの二点を詰めておくこと。装置仕様の検討は、むしろ最後でよい。

まず確認:本当に必要なのは XCDA か

「XCDA にアップグレードしたい」という一言の裏には、まったく異なる四種類の要求が隠れていることがある。最初にすべきは装置探しではなく、要求を数値に置き換えることだ。

聞こえてくる要求実際の意味次にすること
装置の設置仕様書に H₂O・TOC・酸・塩基の ppt 指標が並んでいる本物の XCDA 必須要件装置仕様の項目ごとの数値をそのまま設計入力にする
仕様は「露点 −70°C」だけCDA 乾燥段のグレードアップであり、XCDA ではない乾燥機を見直す。XCDA 精製装置は不要
歩留まり異常や光学部品のヘイズがあり、ガスが疑われている汚染がガス由来か部屋の空気由来か、まだ分からないまず既設 CDA の出口を測り、並行して室内の AMC も調べる
顧客や監査で「XCDA」を求められたが、数値が示されていない要求がまだ定義されていない項目ごとの指標と測定方法を先に入手し、それから仕様を議論する

最も多いのは二行目のケースだ。露点が表すのは水分というただ一種類の物質であり、CDA と XCDA を分けるのは分子状汚染物質(二酸化炭素、有機物、酸・塩基、難溶性化合物)である。この点はXCDA 技術解説で詳しく説明した。露点の要求が厳しくなっただけなら、乾燥機に投資すれば足りる。CDA 自体の組成や等級の見方はCDA とはを参照されたい。

三行目で避けたいのは、原因の取り違えだ。ウェーハ表面の AMC は、装置へ送られるガスから来ることもあれば、部屋の空気そのものから来ることもある。後者はケミカルフィルターで対処すべきもので、ガス系統を丸ごと入れ替えても解決しない。

第一段階:既存 CDA システムで確認すべき六項目

XCDA 精製装置の入口に来るのは、既設の CDA そのものである。入口が不安定なら、どれほど優れた精製装置でも長くはもたない。だからアップグレードの前に、まず現状をすべて洗い出す。

#確認項目調べる内容XCDA への影響
1圧縮機給油式かオイルフリーか、台数、バックアップ方式オイルは吸着剤被毒の最大の原因。給油式なら除油段と TOC 監視を重点項目にする
2乾燥機冷凍式か吸着式か、加圧露点の実測記録(銘板値ではない)露点の変動はそのまま吸着層の負荷となり、再生周期を縮める
3ろ過と除油コアレッシングフィルター、微粒子フィルター、活性炭除油フィルターの交換記録と差圧前処理がいったん破綻すると、下流の吸着剤が受けた損傷はたいてい再生では戻らない
4ヘッダー配管材質、施工年、継手形式、行き止まり管とデッドレグどの区間を流用でき、どこを作り直すかが決まる
5使用点リストXCDA が必要な装置と、それぞれのピーク流量・平均流量・圧力・設置位置供給方式と装置容量が決まる
6ユーティリティ電源容量、再生排気の経路、設置スペース、保守通路全自動再生型には加熱用電力と排気が必要で、後から追加するのが最も高くつく

項目 2 は実測記録で判断する。乾燥機の銘板に −40°C とあっても、夏場の満負荷時にそれが出せるとは限らない。丸一シーズン分の露点トレンドのほうが、どんな仕様書よりも正直だ。項目 5 は装置ごとに列挙し、「工場全体の総使用量」でひとくくりにしないこと —— 本当に XCDA が必要な装置は、工場全体の空気使用量のごく一部にすぎないことが多い。

第二段階:供給方式を選ぶ——精製装置をどこに置くか

CDA から XCDA へ:精製装置の位置で配管のやり直し量が決まる

同じコンプレッサー室と装置 3 台で、精製装置の位置だけを動かす

CDA 配管(多くは流用可)XCDA 配管(EP 316L で再施工)P精製装置A 全工場集中方式精製装置はコンプレッサー室の隣。幹線からすべての使用点まで更新が必要コンプレッサーP装置装置装置EP 管:最長精製装置:1 式B エリア方式幹線は CDA のまま、エリア内の配管だけを更新コンプレッサーP装置装置装置EP 管:中程度精製装置:エリアごとに1 式C 装置直前(POU)精製装置は装置の直前。最後の短い区間だけを更新コンプレッサーP装置P装置P装置EP 管:最短精製装置:装置ごとに1 本

3 方式は併用できる。幹線は CDA のまま、需要が集中するエリアはエリア方式、点在する敏感な装置には POU を個別に追加する。

精製装置をどこに置くかで、下流のどれだけの配管を XCDA グレードに引き上げる必要があるかが決まる。アップグレード案件全体で、予算に最も大きく効く判断である。

比較項目全工場集中型エリア分散型装置直前(POU)
精製装置の位置コンプレッサー室の隣エリアの機械室(棟・フロア・露光エリア単位)各装置の脇
更新が必要な配管ヘッダーからすべての使用点までエリアのヘッダーから当該エリアの使用点まで精製装置から装置までの短い区間
代表的な設備全自動再生型全自動再生型POU インライン精製装置
適する場面新工場で、大半の装置が XCDA を必要とする需要が特定のエリアに集中している対象装置が少なく分散している、またはパイロットライン
利点設備が集約され、保守箇所が少ない配管量と設備台数のバランスが取れる投資が小さく、段階的に導入でき、他の装置に影響しない
リスク配管が長く dry-down に時間がかかり、一か所の汚染が全工場に波及するエリア境界を明確に計画する必要がある設備台数が多く、一台ごとにサンプリング点と交換スケジュールが要る

全工場集中型とエリア分散型では、複数塔を並列にして自動再生するXCDA 精製装置を用いるのが一般的で、装置直前には加熱不要で返送再生できるPOU インライン精製装置が多く使われる。三つの方式は併用でき、実務ではむしろよくある構成だ。ヘッダーは CDA のまま、需要が集中するエリアはエリア分散型とし、点在する敏感な装置にはそれぞれ POU を追加する。判断にあたっては、まず次の二点を問うとよい。

  1. 1XCDA が必要な装置は、このエリアの空気使用量のどれほどを占めるか。比率が高く位置もまとまっていれば、エリア分散型が割に合うことが多い。二、三台だけなら POU のほうが合理的だ。
  2. 2対象装置は今後増えるか。増えるなら、エリア分散型のヘッダーには容量と接続口を予備として確保しておく。POU は一台ずつ追加するため予備確保の問題はないが、台数が増えると保守スケジュールが負担になる。

第三段階:買い間違えないための流量計算

選定が流量から始まることはガス精製装置の選定ガイドで述べたとおりだ。アップグレード案件では、それに加えて計算から漏れやすい項目が三つある。

漏れやすい項目漏れるとどうなるか対処法
装置のピーク流量平均値で選定すると、ピーク時に接触時間が足りず、不純物が早期に破過する装置ごとに設置仕様書のピーク値を取り、そのうえで平均流量時の接触時間を確認する
再生ガス消費量再生で消費される製品ガスを見込まず、圧縮機の容量が不足する再生ガス消費量の実データをサプライヤーから入手し、圧縮機と乾燥機の容量を再検証する
配管とフィルターの圧力損失精製装置・終端フィルター・バルブの圧損を合計すると、装置入口の圧力が足りない装置入口の必要圧力から逆算し、コンプレッサー室の吐出圧力にまだ余裕があるか確認する

再生ガス消費量については補足しておきたい。吸着式乾燥機も再生型精製装置も、製品ガスの一部を再生パージに消費することがあり、その比率は再生方式によって大きく異なる。ヒートレス式の乾燥機では定格流量の 15〜20% 程度が一般的で、加熱再生式ではおおよそ半分、ブロワー再生式ではさらに少ない。アップグレード案件でよくあるのは、精製装置の仕様には何の問題もないのに、再生ガス消費によって圧縮機の負荷がひと回り増え、結局圧縮機を増設せざるを得なくなるケースだ。

第四段階:配管——残せる区間と作り直す区間

原則は一つしかない。精製装置の出口から先の配管は、どの区間も XCDA システムの一部である。精製装置の上流は引き続き CDA 配管であり、その大半は流用できる。

区間推奨材質と工法既設配管の流用
圧縮機 → 乾燥機一般的な CDA 配管材
乾燥機 → 精製装置入口ステンレス鋼。内部に油汚れや錆くずがないことを確認おおむね可。点検とパージを済ませてから接続するのが望ましい
精製装置出口 → 使用点EP 316L 電解研磨ステンレス鋼、自動オービタル TIG 溶接、裏面の不活性ガスシールド、ゼロデッドレグ弁一般ステンレス、銅管、ねじ込み継手の配管は流用を推奨しない
サンプリング点ゼロデッドレグのサンプル弁、EP 316L新設

なぜ既設配管を残せないのか。一般ステンレスや銅管は内面が粗く吸着容量が大きいため、起動後に水分と有機物を吐き出し切るまで非常に長い時間がかかり、場合によっては ppt 級にいつまでも届かない。ねじ込み継手のシール材やホースは、透過と脱ガスを続ける。真新しい精製装置の後ろに古い配管を一区間でもつなげば、受入検査で測っているのは配管であって、精製装置ではなくなる。

溶接品質はもう一つの決定的な要因である。溶接ビード内側の酸化変色部は水分を吸着し、粒子を脱落させる。そのため XCDA 配管は必ず自動オービタル溶接とし、全工程で裏面に不活性ガスを流して保護する。その理由はTIG 溶接と合金を参照されたい。施工管理も同じくらい重要だ。管材は搬入時から端部を封止し、施工中は不活性ガスによるパージを保ち、分岐長は管径の 3 倍以内に抑えてデッドレグを残さない。

第五段階:ラインを止めずに切り替える手順

最もよくある失敗は、新システムを据え付けたそばから装置に接続してしまうことだ。XCDA システムは施工完了から供給可能になるまでに、パージ、検証、そして切替という過程を経る。スケジュールにはこの期間を必ず織り込んでおく。

フェーズ実施内容完了の判定基準
1. 並行構築新システムを独立して施工し、装置は引き続き既設 CDA から供給を受ける施工、耐圧試験、リーク試験が完了
2. パージと dry-down設計流量で連続パージし、H₂O トレンドをオンラインで監視読み値の単調低下が止まり、数時間続けて安定
3. 受入検査測定のバックグラウンドを確認し、設計流量で再生切替を含めて連続測定単点ではなく、全期間のデータが規格を満たす
4. まず一台を切替重要度の低い装置を一台選んで先に供給源を切り替え、プロセスデータを観察装置側にもプロセス指標にも異常がない
5. 段階的に切替残りの装置をスケジュールに沿ってグループごとに切り替える各グループの切替後に装置入口の圧力と品質を確認
6. バックアップを維持CDA バイパスまたは予備の供給源を一定期間残す書面の手順とオンライン監視がある場合に限りバイパス使用を許可

フェーズ 2 と 3 の所要時間が最も読みにくい。dry-down だけで数時間から数日かかることがあり、受入検査は連続 72 時間、少なくとも二回の再生切替を含めることが推奨される。サンプリングラインの配置やデータの読み方はXCDA の測定と受入実務にまとめてある。

フェーズ 6 のバイパスには特に注意が必要だ。バイパス中に装置へ送られるガスの品質は CDA レベルに戻る。あくまで緊急用であり、長期の運転モードではない。

アップグレード案件でよくある五つの失敗

  1. 1CDA ヘッダーにケミカルフィルターを一つ足して、XCDA とみなす。ケミカルフィルターは H₂O と CO₂ をほとんど処理できず、差は程度ではなく桁の問題である。
  2. 2精製装置の後ろを既設配管につなぎ戻す。精製装置の出口では合格なのに装置入口では不合格 —— 原因究明に最も時間を取られるのは、たいていこのパターンだ。
  3. 3装置の使用量だけを計算し、再生ガス消費量を見込まない。設備が納入されてから圧縮機の容量不足が判明し、圧縮機と乾燥機を追加する羽目になる。
  4. 4入口の CDA が不安定なままアップグレードを始める。乾燥機の露点がふらつき、圧縮機からオイルが漏れていれば、吸着層は早期に劣化し、交換周期は見積時の想定よりはるかに短くなる。
  5. 5受入検査で露点だけ、あるいは H₂O だけを測る。露点計は ppt 域を測れないうえ、TOC、酸・塩基、難溶性化合物はそれぞれ別の吸着層が受け持つ。H₂O が合格でも、全項目が合格とは限らない。

コストは装置の見積だけでは分からない

XCDA アップグレードの予算のうち、装置はその一項目にすぎない。下表に過小評価されやすい費用をまとめた。各社の見積を同じ基準にそろえて比較する際の目安になる。

コスト項目性質過小評価されやすい点
精製装置本体一時費用見積に終端フィルター、サンプル弁、制御・通信インターフェースが含まれているか
XCDA 配管工事一時費用配管が長いほど比率が高くなる。EP 管材、オービタル溶接、施工時の清浄管理もすべて計上する
パージと受入検査一時費用外部委託の測定費用と、dry-down 期間の時間コスト
再生電力と再生ガス消費継続費用再生ガス消費は圧縮機の電気代として跳ね返る
吸着剤とフィルターエレメントの交換継続費用交換周期は入口品質で決まり、入口が不安定だと短くなる
監視機器と定期分析継続費用オンライン機器の校正と消耗品、オフライン分析の外部委託費
切替期間中の生産能力一時費用段階的な切替に伴う装置の停止時間

よくある質問

Q:既設の圧縮機が給油式でも、XCDA にアップグレードできますか?

できますが、リスク管理が必要です。給油式圧縮機でも、十分なコアレッシングろ過と活性炭除油を組み合わせれば、出口の油分はかなり低く抑えられます。問題は、前処理がいったん破綻するとオイルが下流の吸着剤を直接被毒させ、しかも再生では回復しないことです。そのため給油式の系では、除油段の差圧監視、フィルターエレメント交換の徹底、精製装置入口の TOC 監視を必須項目としてください。新設の場合、予算が許すならオイルフリー圧縮機を選ぶことで、このリスクを源流から下げられます。

Q:既設のステンレス配管でも、長めにパージすれば規格に達しますか?

期待しないほうが賢明です。一般ステンレスの内面は EP 316L よりはるかに吸着容量が大きく、パージ時間が大幅に延びるうえ、ある値で頭打ちになってそれ以上下がらないことがよくあります。さらに厄介なのは、一時的に合格まで下がっても、停止・再起動や流量変動のあとに吸着物を再び放出することです。精製装置下流の配管は最初から正しく施工するほうが、後から何度も原因を追うより安く済みます。

Q:まず POU で始めて、後からエリア分散型や集中型に移行できますか?

できます。初期投資を抑える方法としてもよく使われます。まず POU で重要装置を規格内に収め、並行して空気使用量・品質・保守の実データを蓄積し、対象装置が一定数まで増えた段階でエリア分散型を計画します。注意したいのは、POU の段階で将来のヘッダーのルートと接続口を検討しておくことです。そうしないと、後の改造で稼働中のエリアに手を入れることになります。

Q:施工完了から装置への供給開始まで、どれくらいの期間を見込むべきですか?

少なくともパージと受入検査の期間は織り込んでください。dry-down に数時間から数日、受入検査は連続 72 時間で少なくとも二回の再生切替を含めることが推奨され、その後にもまず一台を切り替えて観察する期間があります。実際の長さは配管長、材質、施工品質で決まるので、スケジュールに一、二日しか取らないのは避けてください。

Q:アップグレード後も、既存の CDA システムは必要ですか?

必要です。一般的な空気圧機器、シリンダー、エアブロー用途は CDA で十分であり、工場全体の空気を ppt 級にしても、設備、再生エネルギー、保守のコストが増えるだけです。現実的なのは等級別供給です。大半の用途には引き続き CDA を供給し、XCDA は本当に必要な装置にだけ送ります。

Q:切替後も、装置入口にフィルターは必要ですか?

残すことを推奨します。精製装置の多くは高精度フィルターを内蔵していますが、精製装置から装置までの間にあるバルブや継手は、特に切替やバルブ開閉の瞬間に粒子を発生させます。装置入口の終端フィルターが捕捉するのはこの区間の配管自体が出す粒子であり、精製とは別の話です。