仕様は「室内 +5 Pa 陽圧維持」。手持差圧計で測ると +2 Pa

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計器不良?空調設計ミス?それとも位置・タイミング・方法すべて誤り?

「差圧が合わない」問題の多くは空調問題ではなく測定問題

なぜ小さな 5 Pa の測定は難しいか

5 Pa は A4 用紙を 2 m 落下させた動圧相当。つまり:

  • 扉開閉 → 瞬間 ±20 Pa
  • FFU 直下 → 局所気流衝突 +3 〜 +5 Pa
  • 排気口近傍 → 局所吸込 −2 〜 −5 Pa

目標信号(5 Pa)と環境ノイズが同オーダー。慎重制御なしでは真値が測れない。

差圧測定:正 vs 誤

図1:差圧測定点の選択 — 正誤

5 Pa の誤差は計器ノイズではなく位置の問題

すべき ✓

  • 📍
    部屋中央、床上 1.2 m
    定常圧を代表、局所乱流の影響なし
  • 🚪
    扉閉鎖後 5 分待つ
    ΔP が設計値に戻る時間
  • 🔄
    3 回測定し平均
    単発読値のノイズ排除
  • 📏
    計器精度 ≤ ±1 Pa
    これ以下では 5 Pa 目標を検証不可

すべきでない ✗

  • ⚠️
    扉隙間や排気口近傍
    局所乱流で ±3–5 Pa 変動
  • ⚠️
    FFU 出口直下
    ジェット衝突で偽高圧
  • ⚠️
    人員通過直後
    通過瞬間に ΔP が 10–20 Pa 低下
  • ⚠️
    一般マノメータ(±5 Pa)
    精度自体が目標を上回る

目標差圧は通常隣室比 ±5–15 Pa、計器精度 ±1 Pa 以上。測定前は全扉閉鎖・HVAC 安定運転 5 分以上。

測定前の前提条件

  1. 1全扉窓を閉めて 5 分以上 —— 差圧を設計値へ戻す
  2. 2HVAC が定常運転 —— 起動中・VFD 加速中の読値は不可
  3. 3室内に人員移動なし —— 人が気流を撹乱

測定位置の選択

良い位置:

  • 室内幾何学的中央床上 1.2 m(呼吸高さ)
  • 回避:扉隙間、排気口、FFU 直下、装置排気

悪い位置:

  • 扉近傍 —— 通過影響大
  • 給気・戻り口近傍 —— 局所ジェット・吸込
  • 装置背後 —— 壁面渦流

計器選択

精度 ±5 Pa の一般手持差圧計は使い物にならない。±5 Pa を測るには計器精度 ±1 Pa 以上が必要 —— そうでなければ計器読値自体が ±5 Pa 範囲に入り結論不能。

推奨:

  • デジタル微差圧計 精度 ±0.5 Pa
  • リアルタイム電子差圧センサー(FFU 装備、中央監視表示)

読値処理

単発読値は信頼不可。標準手順:

  • 30 秒連続読値
  • 平均 + 標準偏差
  • 標準偏差 > 2 Pa → 条件不安定、原因究明(扉閉不十分?HVAC 未定常?)

風速測定:ISO 14644-3 のグリッド規則

図2:風速測定 — 等間隔グリッドと計器選択

ISO 14644-3 のグリッド:最低 √面積 点、等間隔

測定点グリッド(2 m × 2 m ゾーン例)
12345678910111213141516測点 × 16
最小点数 n ≥ √(面積 m²) × 10
全点平均 + 標準偏差
計器選択
計器測定範囲
熱線式風速計0.05–30 m/s
ベーン式風速計0.2–15 m/s
フローフード40–3500 CMH
  • 熱線式風速計低速層流の第一選択(精度 ±3 %)
  • ベーン式風速計中高速吹出口測定
  • フローフードFFU 合計風量、点速ではない

目標風速は ISO クラス依存 —— Class 5 層流は 0.35–0.45 m/s、Class 7 乱流は換気回数優先。計器は気流方向に正対させる。

ISO クラス別要求

  • ISO Class 1–5(層流)→ 点風速均一性:0.35–0.45 m/s、偏差 ≤ ±20 %
  • ISO Class 6–7(乱流)→ 換気回数(ACH):70–100 回/h
  • ISO Class 8–9 → ACH 20–40 回/h

測点配置

ISO 14644-3 公式:最少測点 n ≥ √(面積 m²) × 10

10 m² の部屋 → 最低 32 点、等間隔分布

計器選択

  • 熱線式風速計 —— 低速層流(0.05–30 m/s、精度 ±3 %)第一選択
  • ベーン式風速計 —— 中高速吹出口(0.2–15 m/s)
  • フローフード —— FFU 合計風量(40–3500 CMH)、点速ではない

プローブ姿勢

プローブは気流方向に正対必須 —— 30° 斜めでは 10–15 % 低読。

初心者ミス:「風速計を振り回す」 —— 全く無意味。

差圧・風速以外に測るもの

ISO 14644-3 完全検証項目:

  1. 1粒子濃度(OPC)—— 主役、他は脇役
  2. 2気流速度
  3. 3差圧
  4. 4気流可視化(スモーク試験)—— 層流が本当に層流か確認
  5. 5回復試験(Recovery)—— 汚染後の復旧時間
  6. 6漏れ試験(Leak Test)—— フィルター Scan Test

いずれか欠落すれば等級検証は不完全。

実務推奨:「測定 SOP」の整備

工場には次を規定する正式 SOP が必要:

  • 毎四半期固定時刻(時間変動排除)
  • 固定測点(ラベル・地図化)
  • 固定計器(年 1 回校正)
  • 固定作業者(人為変動低減)

同じ部屋で時期により異なる値 —— 部屋が変わったのではなく測定が変わった可能性。変数を固定することで真の変化が見える。


差圧・風速測定は「計器で数値を読む」ではない —— 規格・条件・計器要件を伴うエンジニアリング作業。正しく行うことで室の実状を反映し、粒子数急増で初めて気付く事態を回避できる。