手元の H14 出荷検査証には「効率 99.995 %」と記載。しかしそれは全面平均値。5 mm² の一点にピンホールがあれば、局所透過率は 全体の 5 倍〜250 倍 —— 証書では見えない。
なぜ「総合効率」では不十分か
HEPA/ULPA は数千層のガラス繊維が交錯した構造。製造時の微小欠陥 —— 結合剤の切断、繊維の移動、シール材に異物混入 —— が局所ピンホールを生みうる。
総合効率試験は全面の平均透過率を測る。ピンホールは局所透過を 10–100 倍に押し上げても、全面平均では 99.995 % が 99.99 % に落ちる程度。証書は依然合格。
問題は:空気は抵抗最小経路を通る。 5 mm² のピンホール 1 点が、残り全体の合計より多い粒子を漏らす可能性がある。客先は「合格」を受領・取付後に清浄度未達 —— 典型的な原因は検出されなかった局所漏れ。
解法:PAO スキャンテスト
PAO(Poly-Alpha Olefin)は人工油ミストエアロゾル、中位粒径 0.3 μm(HEPA MPPS 近傍)。上流から注入、プローブで下流面を走査、局所透過異常点を検出。
EN 1822-4 / ISO 29463 / IEST-RP-CC034 はすべて H14 以上で個別スキャンテストを要求。
なぜ PAO か実粉塵ではなく
- ▸粒径が均一・安定(実粉塵は変動大)
- ▸屈折率が光学検出に適合
- ▸フィルターを目詰まりさせない(試験後も使用可)
- ▸無毒(DOP は発癌性で淘汰)
3 ステップフロー
図1:PAO スキャンテスト 3 ステップフロー
上流でエアロゾル発生 → 基準濃度測定 → 下流面を走査
上流:PAO エアロゾル生成
Laskin ノズルまたは熱発生器、MMD 約 0.3 μm、10–100 μg/L
基準:上流濃度測定
光学粒子カウンターまたは光度計で上流(C₁)
下流:点走査
プローブが S パターンで下流面を走査、C₂ 記録
EN 1822-4 / IEST-RP-CC034 は H14 以上で個別スキャンテストを要求。走査速度 ≤ 50 mm/s、プローブはフィルター下流面から 20–30 mm。
上流:エアロゾル生成
Laskin ノズルまたは熱発式発生器で PAO を霧化。濃度 10–100 μg/L、上流チャレンジ濃度を全面均一に。
基準:上流濃度 C₁
光学パーティクルカウンター(OPC)または光度計で上流濃度を読み、100 % 基準とする。
下流:点走査
プローブを下流面から 20–30 mm、S パターンで全面を走査、速度 ≤ 50 mm/s。下流濃度 C₂ を同期記録。
各点の局所透過率:
P (%) = (C₂ / C₁) × 100
Pass / Fail 判定
図2:Pass/Fail 判定基準(EN 1822 / ISO 29463)
総合効率 × 局所透過率 — 両方を満たすこと
| 等級 | 総合効率 ≥ | 局所透過率 ≤ | 総合透過率 ≤ | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| H13 | 99.95 % | 総合値 × 250 | 0.05 % | 走査は任意、推奨 |
| H14 | 99.995 % | 総合値 × 5 | 0.005 % | 個別走査必須 |
| U15 | 99.9995 % | 総合値 × 5 | 0.0005 % | 個別走査必須 |
| U16 | 99.99995 % | 総合値 × 5 | 0.00005 % | 個別走査必須 |
| U17 | 99.999995 % | 総合値 × 5 | 0.000005 % | 単点試験で代替可 |
注意:総合値合格 ≠ 漏れなし。平均 99.995 % でも、ある 5 mm² 地点で 5 倍の局所透過があれば Fail。そのユニットは修理または廃棄。
両閾値を同時に満たすこと:
- 1総合効率 ≥ 仕様値(H14 ≥ 99.995 %)
- 2局所透過率 ≤ 総合値の 5 倍(H14 以上)
例:H14 総合透過率 0.003 %(合格)。しかし一点で 0.02 % —— 総合の 6.67 倍、5 倍閾値超過で Fail。修理または廃棄必須。
3 大失敗モード
失敗 1:シール材ピンホール
最多。硬化時の気泡または繊維混入でピンホール。特徴:異常点が枠周囲に集中、中央は正常。
失敗 2:ろ材内部の移動
製造中にろ材が移動、プリーツ内部に小さな亀裂。特徴:中央で位置ランダムに見えるが、同一プリーツ上。
失敗 3:シール不連続
ろ材と枠の間のゲルが連続していない、枠-ろ材間隙をバイパス。特徴:一辺全体で高透過、単点ではない。
実務上のポイント
1. Scan Test は必須、オプションではない
コスト削減で Scan Test を省く客もいる。節約はフィルター単価の 5 % 未満だが、リスクは全体不達成。割に合わない。
2. 「個別 Scan Test レポート」を要求
「このロットから 10% 抽検合格」ではない。各フィルターに固有の Scan Test レポート(シリアル番号、走査経路図、異常点リスト付き)を要求。
3. 現場で再試験
工場試験はフィルター単体。FFU/AHU 取付後、枠と筐体の間に漏れが残る可能性あり。設置後に In-situ Leak Test を実施、「フィルター + 設置」を統合検証。
「H14 工場合格」と「H14 設置後の実効性能」は別物。 間に Scan Test がある。省略不可。



