お宅の空気清浄機の「ePM1 70%」は何を意味する?なぜ 2018 年以降、交換するフィルターの表示がすべて変わった?

EN 779 の何が不十分だったか

1993 年から欧州では EN 779 で換気用エアフィルターを分類していた:G3/G4(粗)、M5/M6(中)、F7/F8/F9(精密)。

問題は?全等級が 0.4 μm 単一粒径の効率に基づいていたこと。

現実の大気汚染は 0.4 μm だけではない。WHO と各国環境庁は PM1 / PM2.5 / PM10 を追跡しており、0.4 μm 単点効率はこれらに直接換算できない。設計者が F7 フィルターを手にして「これは PM2.5 をどれだけ除去するか?」に即答できなかった。

図1:EN 779(旧規格)vs ISO 16890(新規格)

「単一粒径」から「3 段粒径」へ — 実際の大気質に対応

EN 779(2018 年以前)

0.4 μm 単一粒径での効率

0.1 μm1 μm10 μm単点 0.4 μm
ISO 16890(2016 年以降)

3 段粒径効率、PM1 / PM2.5 / PM10 に対応

0.1 μm1 μm10 μmePM1ePM2.5ePM10

EN 779 は 0.4 μm 単一効率で G/M/F を分類。ISO 16890 は PM1/PM2.5/PM10 に直接対応。

そこで 2016 年、ISO 16890 が正式発行、2018 年までに EN 779 を完全置換。新規格は PM 指標に直接対応し、エンジニアは空気品質目標からフィルターを選定できるようになった。

ePM1 / ePM2.5 / ePM10 とは何か

ISO 16890 は 3 段粒径で分類:

  • ePM1: 0.3–1.0 μm — PM1(最も危険な画分、肺胞まで到達)に対応
  • ePM2.5: 0.3–2.5 μm — PM2.5(呼吸可能、肺に到達)に対応
  • ePM10: 0.3–10 μm — PM10(上気道まで到達)に対応

3 つとも 0.3 μm から始まる —— これは ISO 16890 の試験下限。違うのは上限

なぜ PM1 が最優先? 1 μm 以下の微粒子は気管支を突破し、肺胞に到達、さらには血流に入る。WHO は PM1 を独立監視指標として扱う方向へ進んでいる。

なぜ「平均」を取るのか? 3 段階試験フロー

EN 779 に対する最大の革新は 「負荷後効率」を等級評価に組み込んだこと。

図2:ISO 16890 三段階試験フロー

初期効率 → 負荷後効率 → 平均。平均値のみが最終評価

1

初期効率測定

DEHS オイルミスト + KCl 塩霧

分級効率曲線を取得
2

負荷(載塵)試験

ISO 12103-1 A2 粉塵で実負荷を模擬

負荷後分級効率を取得
3

平均化・分類

算術平均を ePM に照合

平均 < 50% は表示せず
最終分類基準
ePM =(初期 + 負荷後)÷ 2

EN 779 との最大の違いは負荷後効率を等級評価に組み込んだこと。

なぜこう測るのか

多くの中効フィルターは静電気に頼って効率を出す。新品は帯電していて捕集数字が美しい。しかし短期間の運用後、静電気は粉塵蓄積や湿度で失われ、効率が 90 % から 60 % まで落ちうる。

EN 779 は初期値だけを測定 —— カタログは綺麗でも実運用とズレが大きかった。

ISO 16890 は初期と負荷後の算術平均を取り、実態に近づけた:

ePM =(初期効率 + 負荷後効率)÷ 2

平均が 50 % 未満の場合、その等級は表示されない —— ハード閾値で、50 % 以下のフィルターはそもそも該等級を名乗れない。

「ISO 16890 - ISO ePM1 65 %」の読み方

実際のフィルター表示:

ISO 16890 - ISO ePM1 65 %

どこから来たか?測定結果が:

  • ePM1 平均 = 65 %(≥ 50 %、合格)
  • ePM2.5 平均 = 82 %
  • ePM10 平均 = 95 %

分類ルールは小さい粒径から大きい粒径へ、最初に合格したものを採用:

  1. 1ePM1 ≥ 50 % ? → Yes、よって ePM1 等級に分類
  2. 2ePM1 が不合格なら ePM2.5 に降格
  3. 3ePM2.5 も不合格なら ePM10 に降格

結果:ISO ePM1 65 % —— 「ePM1」は最小粒径を処理できること、「65 %」は実際の効率値。

あなたの場所はどの等級を選ぶか

用途別の最低推奨等級 —— 過仕様も下振れも無駄:

図3:ISO 16890 用途別選定ガイド

使用シーン別の最低推奨等級 — 過仕様も下振れも避ける

B
一般オフィス / 住宅
ISO ePM2.5 ≥ 50 %

呼吸可能粒子の大半を捕集、省エネ両立

A
医療施設 / 学校
ISO ePM1 ≥ 50 %

微細粒子は肺深部に到達

A+
HEPA 前段プレフィルター
ISO ePM1 ≥ 80 %

後段 HEPA の寿命延長

C
工場 / 地下駐車場
ISO ePM10 ≥ 50 %

主要汚染源は粗大粒子

高汚染地域は一段階上げる。高静電プロセスや乳幼児のいる空間は ePM1 ≥ 50 % を最低とする。

代表的なシーン:

  • 一般オフィス / 住宅ISO ePM2.5 ≥ 50 %以上、呼吸可能粒子の大半を捕集、省エネとのバランス
  • 医療施設 / 学校ISO ePM1 ≥ 50 %以上、微細粒子は肺深部に到達
  • HEPA 前段プレフィルターISO ePM1 ≥ 80 %、後段 HEPA の寿命延長、長期コスト削減
  • 工場 / 地下駐車場ISO ePM10 ≥ 50 %で十分、主要汚染源は粗大粒子
高汚染地域(年平均 PM2.5 > 25 μg/m³)は一段階上げる高静電プロセス乳幼児のいる空間は ePM1 ≥ 50 % を最低基準とする。

よくある 3 つの誤解

誤解 1:「ePM10 は ePM1 より強い」

逆だ。ePM1 は ePM10 ができることに加えて、もっと多くのことができる。 ePM1 は最も厳しい —— 最小で最も難しい画分を扱う。ePM10 は 10 μm 粗粒子までしかコミットしない。

誤解 2:「65 % 平均は EN 779 の F7 より悪いのでは?」

直接比較できない。EN 779 F7 は 0.4 μm で約 80 % の*初期*効率だが、1 年後は 60 % かもしれない。ISO 16890 の 65 % は初期と負荷後の平均で、実運用寿命の性能に近い。旧規格の初期値を新規格の平均値と比較してはいけない。

誤解 3:「高ければ高いほど良い、ePM1 95 % を選ぼう」

過仕様は 3 方向にコストを払う:購入単価高、圧損高(電気代高)、早期目詰まり(寿命短)。空気品質目標に基づいて選ぶ、最高値ではない。


ISO 16890 は表示変更ではなく、エアフィルターが公衆衛生と整合する瞬間

単点効率から PM 対応へ、初期値のみから負荷後平均へ、ISO 16890 が成したのは 1 つ:フィルター表示を我々が実際に呼吸している空気と一致させる

フィルターを選ぶ前に、対象とする PM 指標と目標濃度を明確化 —— それにより等級が決まる。過仕様も下振れも無駄。